Setting the international standard for interoperable wireless charging
The sign of interoperability

無接点充電システムと従来の有線式電源アダプタを使用したときの節電比較

Ron Hui教授、IEEEフェロー
ディレクター、パワーエレクトロニクス・センター
香港城市大学
2009年8月21日

1. 序論

消費者向けのさまざまな可搬式電子製品に無接点充電システムを使用すると、次のような可能性が考えられる:

  1. 広範にわたる消費者向け電子製品に対する共通の充電台の形成;
  2. 将来的には従来型の充電器の数(不要となる充電器)を削減;
  3. 電力消費量および従来型充電器の製造とパッケージングに使用される天然資源の削減; 
  4. 上述の従来型充電器を輸送するのに必要なエネルギーの量的削減; 
  5. 共通使用できる充電台がないために生じるさまざまな従来型充電器からの有毒で生物分解性のない電子廃棄物の量的削減; 
  6. 従来型充電器から生じる大量の電子廃棄物の処理やクリーニングに要する人的その他の資源、設備およびエネルギー(電力消費)の削減

本稿では従来の有線式電源アダプタと無接点充電器を電力消費量の観点から2種類のケースで長短を比較検討する。比較は以下のシステムについて行う:

  1. 外部電源によるAC-DC給電器(いわゆる電源アダプタ) 
  2. ワイヤレス給電の構成要素:
    • AC-DCアダプタ
    • 伝送電子機器 
    • 伝送器のコイル
    • 受電器のコイル
    • 受電器側の整流回路 

2. ケーススタディ1 – 負荷側の個数が単数と複数の場合の充電および待機電力

本ケーススタディでは(i)充電のための電力と(ⅱ)待機電力の両方を含めて有線式電源アダプタとワイヤレス充電器のエネルギー消費量について検討する。 待機電力の削減技術については既知のデータがあり、有線式とワイヤレス方式の両方の充電器に利用できるため、ここでは待機電力に関する損失と効率については既存の公開情報をそのまま適用する。

本スタディは以下の考察および前提条件に基づく:

  • 外部電源AC-DCアダプタの「無負荷又は待機電力消費量」についてはenergy star のウェブサイト[1]のデータを使用する。 
  • [1]から、5Wの有線式充電器は一般的に無負荷状態で0.14ワット消費することが分かる(即ち待機電力が0.14ワット)。 ピーク電力は充電の初期段階にのみ消費され、バッテリの充電が進むと充電電力は低下するはずであるから、充電の平均電力は2Wと推定できる。 
  • 外部電源アダプタは24時間差し込んだままにして、1日につき1時間使用すると仮定する。 
  • 無接点充電器によって置き換えられる有線式電源アダプタの数量は1から6台までとする。 
  • 無接点充電器は0.14ワットの待機電力を消費すると仮定する。 
  • 無接点充電器は24時間差し込んだままにして、1日につきX時間使用すると仮定する。(デバイスは並行して充電できるため、Xは1からnまでの値をとり、nは無接点充電器によって置き換えられる有線式電源アダプタの数となる)。 
  • 有線式電源アダプタの負荷時の効率は72%と仮定する。 
  • ワイヤレスシステムには特別の回路や部品が含まれるため、無接点充電器の負荷時の効率は有線式充電器の効率の70%(即ち約50%)になるものと仮定する。

上記の考察および前提条件に基づいた比較を表1に示す。

有線式電源アダプタの待機電力(ワット) 0.14
無接点充電器の待機電力(ワット) 0.14
有線式電源アダプタによる充電時間(時間/日) 1
有線式電源アダプタの待機時間(時間/日) 23
無接点充電器による充電時間(時間/日) X
無接点充電器の待機時間(時間/日) 24-X
無接点充電器の伝送効率(有線式電源アダプタの%) 70%
負荷時の平均電力量(ワット) 2
有線式電源アダプタの負荷時の効率(%) 72%

 

 

ワイヤレス電力で置き換えられる外部給電の数 n

1

2

3

4

5

6

有線式電源アダプタの待機モード時の合計電力消費量(Wh/日)

3.22

6.44

9.66

12.88

16.10

19.32

無接点充電器の待機モード時の合計電力消費量(Wh/日)、最大(X=1)

3.22

3.22

3.22

3.22

3.22

3.22

無接点充電器の待機モード時の合計電力消費量(Wh/日)、最小(X=n)

3.22

3.08

2.94

2.80

2.66

2.52

負荷1台につき供給されるエネルギーの合計(Wh/日)

2.00

4.00

6.00

8.00

10.00

12.00

有線式電源アダプタの負荷時のエネルギー消費量(Wh/日)

2.78

5.56

8.33

11.11

13.89

16.67

無接点充電器の負荷時のエネルギー消費量(Wh/日)

3.97

7.94

11.90

15.87

19.84

23.81

 

 

 

 

 

 

 

1日ベース: 

 

 

 

 

 

 

有線式電源アダプタによる合計エネルギー消費量(Wh/日)

6.00

12.00

17.99

23.99

29.99

35.99

無接点充電器による合計エネルギー消費量(Wh/日)最大

7.19

11.16

15.12

19.09

23.06

27.03

無接点充電器による合計エネルギー消費量(Wh/日)最小

7.19

11.02

14.84

18.67

22.50

26.33

無接点充電器によるエネルギー節減量(Wh/日)最小

-1.19

0.84

2.87

4.90

6.93

8.96

無接点充電器によるエネルギー節減量(Wh/日)最大

-1.19

0.98

3.15

5.32

7.49

9.66

 

 

 

 

 

 

 

年間ベース:

 

 

 

 

 

 

有線式電源アダプタによる合計エネルギー消費量(kWh/年)

2.19

4.38

6.57

8.76

10.95

13.14

無接点充電器による合計エネルギー消費量(kWh/年)最大

2.62

4.07

5.52

6.97

8.42

9.87

無接点充電器による合計エネルギー消費量(kWh/年)最小

2.62

4.02

5.42

6.82

8.21

9.61

無接点充電器によるエネルギー節減量(kWh/年)最小

-0.43

0.31

1.05

1.79

2.53

3.27

無接点充電器によるエネルギー節減量(kWh/年)最大

-0.43

0.36

1.15

1.94

2.73

3.52


表1: 有線式充電器および無接点充電器の充電および待機電力の消費量比較 

 

3. ケーススタディ2 – 負荷1台を充電するときの合計電力消費量およびその他の電力消費量

IT製品に関する消費者行動の調査によると、消費者は新製品を頻繁に購入する傾向があるとしている。携帯電話など可搬式電子製品のライフサイクルはおおむね12ヶ月から18ヶ月である。以下は有線式電源アダプタおよび無接点充電システムの電力消費量に基づいた分析である。次の要素について検討する:

  1. 負荷1台を5年間にわたり充電するときのエネルギー消費量
  2. 上記2種類のシステムのプラスチックケースを製造するためのエネルギー消費量 

分析に用いた前提条件には以下のものが含まれる:

  1. 携帯電話のライフサイクルは1.5~2年とする(消費者行動による)。 
  2. 新製品の各販売には携帯電話機1台と有線式電源アダプタ1台(無接点充電器が使用されない場合)が含まれるものとする。 
  3. 5年のうちに携帯電話機の買い換えに伴って従来の有線式電源アダプタが3台製造されるものとし、無接点充電器の場合は携帯電話機が替わっても同じものを使用するものとする。  
  4. 電子部品の製造で消費する電力量は無視する。  
  5. 製品を製造するための天然資源の採掘に要する電力消費量は無視する。 
  6. 製品の輸送に要する電力消費量は無視する。  
  7. 有毒で生物分解性のない電子廃棄物の輸送やクリーニングに要する電力消費量および他の資源は無視する。  
  8. プラスチック成型加工に要する電力消費量。 

3.1 エネルギー伝送効率の比較

本節では5年間における合計電力消費量を比較する。
ケーススタディ:
無接点充電器の平均システム効率 Nsys-wireless= 0.50 (50%)
有線式電源アダプタの平均システム効率 Nsys-wired= 0.72 (72%)
平均充電電力は2Wと仮定する。

ケーススタディ1の結果から、

5年間の無接点充電器の合計エネルギー消費量(Pused-wireless
= 2.62 x 5 = 13.10 kWh

5年間の有線式電源アダプタの合計エネルギー消費量(Pused-wired
= 2.19 x 5 = 10.95 kWh


3.2 充電システムのプラスチックケース(他の電子部品は考慮の対象外)の製造に要するエネルギー消費量の比較

Renewable Energy Research Group(2)の研究調査によれば、ポリカーボネート(充電器に使用される一般的なプラスチック)のプラスチック加工に必要なエネルギーは1 kgごとに107MJ (又は29.72 kWh)である。

実際の経験から:
無接点充電器1台に含まれるプラスチック材料のおよその重量(Wwireless)は80gである。
有線式電源アダプタ1台に含まれるプラスチック材料のおよその重量(Wwired)は50gである。

したがって、
無接点充電器1台を製造するためのエネルギー消費量は107 MJ x 0.08 = 8.56 MJ = 2.37 kWh。
有線式電源アダプタ1台を製造するためのエネルギー消費量は107MJ x 0.05 = 5.35 MJ =1.49 kWh。

消費者が5年のうちに携帯電話機を3回買い換えると仮定すると、関連製品を製造するための合計エネルギー消費量は: 

無接点充電器(Mused-wireless)の場合は2.37 kWh。

有線式電源アダプタ(Mused-wired)の場合は3 x 1.49 kWh = 4.47 kWh。


3.3 負荷1台を5年の期間に充電するときの合計エネルギー消費量の総合比較

無接点充電器1台が5年間で消費する合計電力量: (Eused-wireless) + (Mused-wireless) = 13.10 kWh + 2.37 kWh = 15.47 kWh

有線式電源アダプタ3台が5年間で消費する合計エネルギー量:  (Eused-wired) + 3(Mused-wired) = 10.95 kWh + 3 x 1.49 kWh = 15.42 kWh 

 

  5年間の充電エネルギー消費量 (kWh) 製品のプラスチック加工に要するエネルギー (kWh) e-廃棄物処理に要するエネルギー (kWh) 充電器の輸送に要するエネルギー (kWh) 推定エネルギー
(kWh)
無接点充電器1台 13.10 2.37 X Y 15.47 + (X+Y)
有線式充電器1台 10.95 1.49 X Y 12.44 + (X+Y)
有線式充電器2台 10.95 2.98 2X 2Y 13.93 + (2)(X+Y)
有線式充電器3台 10.95 4.47 3X 3Y 15.42 + (3)(X+Y)

表2 負荷1台を5年間充電するベースでの比較 
注記:

  1. 電子部品、給電用ケーブルやソケットの製造のためのエネルギー量は除外している。 
  2. 製品材料の損失高は含んでいない。 
  3. Xは有毒で生物分解性のない電子廃棄物の処理やクリーニングに要するエネルギー量を意味する。  
  4. Yは製品を工場から流通網まで輸送するのに要するエネルギー量を意味する。 

まとめ:
表2から、次のことが分かる:

  1. ケーススタディ2では負荷1台のみを充電するときのエネルギー消費量に焦点を置いているが、表2のデータからは、無接点充電システムがいくつかの有線式電源アダプタの必要性を省ける可能性があるためエネルギーおよび物的資源の消費が少なくてすむ可能性がある。
  2. (X+Y) > 1.54 kWh (即ち15.47 kWh – 13.93 kWh)が成立するかぎり、無接点充電器1台で有線式電源アダプタを2台以上置き換えられるケースではエネルギー節減の利益をもたらすことができる。   
  3. 無接点充電器で置き換えられる有線式電源アダプタの台数が増えるほど、エネルギーの節減量が増える。
  4. 無接点充電システムに基づく共通の充電プロトコルを使用すれば個々の充電器を省けるので有益である。表2から、複数負荷用の汎用無接点充電器パッドが負荷3台まで収容できれば3台の外部電源アダプタが不要になる。その結果、エネルギー節減および電子廃棄物の廃絶といった環境目標も同時に達成できる。 

4. 結論

本調査は無接点充電システムと従来型の電源アダプタのエネルギー消費量の比較を試みるものである。2つのケーススタディから得た2組の結果から、1台の無接点充電システムで複数負荷を充電できる機能を持っていれば、1対1で対応する有線式電源アダプタを個別に使用するのに比べて特徴的な優位性があることが明らかである。この優位性は明確であり、無接点充電器が2台以上の有線式電源アダプタを置き換えられるケースでは優位性は更に重大となる。

エネルギー節減による優位性は(ⅰ)待機電力の削減および(ⅱ)不要な有線式電源アダプタの製造と輸送に要するエネルギーの削減から生じる。エネルギー節減の観点以外にも、従来式の電源アダプタの数量を削減できることで電子廃棄物を大量に削減できる可能性があり、長期的には環境保護にも大いに貢献できる。この環境面での利益量については今回の分析対象から外している。


参照文献:

  1. http://www.energystar.gov/index.cfm?c=ext_power_supplies.power_supplies_consumers
  2. Bruno GERVET, 著「原油を使用したプラスチック加工は地球温暖化の原因となる」、2007年5月、Renewable Energy Research Group、 Département de Génie Energétique et Environnement INSA フランスLyon、http://www.ltu.se/polopoly_fs/1.5035!plastics%20-%20final.pdf

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